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51抗菌薬

 抗菌薬は,おおよそ抗生物質と同義語と考えてください。以下,どの薬がどの皮膚疾患によく使われるかという視点から記します。商品名は,当院で採用されているものを挙げました。カッコ内はジェネリック医薬品(安い)です。

ペニシリン系
 内服 ビクシリン,サワシリンなど
 点滴 ビクシリン,ペントシリン,ユナシン-Sなど

 丹毒は,ヨウレン菌感染により,皮膚が真っ赤に腫れるの病気ですが,この場合にペニシリン系がよく使われます。また,後述の蜂窩織炎などにも用いられます。

セフェム系
 内服 セフゾン,ケフラール,フロモックスなど
 点滴 セファメジンαなど

 セフェム系は蜂窩織炎・とびひなど,ブドウ球菌感染が疑われる場合に使います。

アミノグリコシド系
 外用 ゲンタシン軟膏,ソフラチュール

 ゲンタシンはとびひ・軽度の外傷に使われます。ソフラチュールはシート状で,巻きづめから爪囲炎(爪の周りにばい菌が入って腫れる)が起こったとき,爪に挟むかたちで使います。また,ソフラチュールはやけどや術後の感染を防ぐときにも使うことがあります(これを貼ってからガーゼを貼ると,ガーゼ交換のとき傷口にガーゼがくっつかなくなり便利という効果もあります)。

マクロライド系
 内服 クラリスなど

 前述のヨウレン菌やブドウ球菌に対して使われます。

リンコマイシン系
 点滴 ダラシン(ミドシン)
 外用 ダラシンTゲル

 にきびを悪化させるニキビ菌(P.Acne)をやっつけるために使われます。

テトラサイクリン系
 内服 ミノマイシンなど
 ミノマイシンはやはり上記のP.Acneをやっつけるために使われます。この薬は子どもには原則として使うべきではないのですが,とびひが他の薬ではどうしても治らない場合は使うことがあります(アトピー性皮膚炎の子どもがとびひになって治りにくい場合,MRSAで,多くの抗生物質に対し耐性があって,ミノマイシンくらいしか効くものがないことはときおりあります)。また,免疫系に変化をもたらす作用があるため,水疱性類天疱瘡や痒疹に使われます(細菌をやっつける目的ではないのですが)。

クロラムフェニコール系
 外用 クロマイ-P軟膏

 クロマイ-Pは弱いステロイドも混ぜてあるため,湿疹などかゆみがある皮膚病で,ばい菌が皮膚に入りじくじくしたときに用いる場合があります。

ハンセン病治療薬
 内服 レクチゾールなど

 レクチゾールはハンセン病の治療薬として開発されましたが,免疫系にも関与することから,ジューリング疱疹状皮膚炎・天疱瘡・類天疱瘡にも効果があります。

ニューキノロン系
 内服 クラビットなど
 外用 アクアチムクリーム

 クラビットは前述のヨウレン菌やブドウ球菌に対して使われます。また,アクアチムクリームはニキビ用として開発され,のちにとびひなどにも適応が拡大されました(つまり,とびひに対して保険診療では使えなかったのが,制度が変わり保険を使ってよいことになりました)。