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25ウィルス感染症

 ※52抗ウィルス薬参照

<この項で出てくる主な疾患と簡単な診断法>

水痘:みずぼうそう。発熱と同時に赤い発疹が生じ,発疹は水疱となり,やがて黒いかさぶたとなる。

麻疹:はしか。発熱など,風邪のような症状に始まり,その後口腔粘膜に小白斑が出,やがて全身に赤い発疹が出て,それが網目状になる。

風疹:症状は軽症の麻疹に似る。発熱と前後して発疹が現れ,二、三日で治る。

帯状疱疹:神経に沿って帯状に痛みを伴った赤い発疹ができる病気。

<詳説>

水痘
 みずぼうそう。

 症状
 潜伏期は2,3週ほどで,37℃台の発熱・全身倦怠感とともに,全身に小紅斑が出現する。個疹はそう痒を伴い,数日の経過で紅斑→丘疹→水疱→痂皮と進行する。一見,虫刺され症に似た小水疱が生じるが,頭皮にも水疱を生じることが特徴である。次々と新しい皮疹が発生するため,新旧の皮疹が混在する。水疱は口腔粘膜や眼瞼結膜などにも形成される。全経過は7-10日で,瘢痕を残さず治癒するが,二次感染や掻破により軽度瘢痕が残ることもある。
 治療
 フェノール亜鉛華リノメント外用。小児では対処療法で十分とされるが,最近は重症化の回避のため抗ウィルス薬アシクロビル(主剤として80 mg/kg/day,分四)を用いる例が多い。
 大人では二次感染を合併しやすく重症化しやすいため,入院してアシクロビル点滴一日三回,もしくはアシクロビル4000mg分五内服。アスピリンは禁忌。


麻疹
 いわゆる「はしか」。10-14日間の潜伏期を経て発症する。成人にも発症することもあり,小児より重症に経過することも多い。

 症状
 飛沫感染によって伝播。潜伏期は9-12日,平均11日である。臨床経過から,カタル期(発症約5日まで),発疹期(約10日まで),回復期の3期に分類される。
 1 カタル期
 3,4日間,38℃の発熱とともに鼻汁やくしゃみ,眼脂,咳などのカタル症状をきたし,この時期の気道分泌物や涙液,唾液が最も強力な伝染源となる。カタル期末期の約1,2日間,解熱すると同時に口内の頬粘膜,主に下顎臼歯相当部に点状の幸運を伴う白色斑数個ないし数十個が認められる。これをKoplik (コプリック斑)といい,発疹期には消退傾向となる。まれに,縞模様を呈したり,一カ所に集ぞくし,鷲口様の像を呈する。
 2 発疹期
 カタル期末期の一時期的な解熱の後,発疹の出現やカタル症状の悪化とともに再度の体温上昇とともに皮疹が出現する。(二峰性の発熱が特徴。)耳後部,頚部のから始まり,顔面,上肢,前胸部から全身へと「上から下へ」拡大。(風疹では癒合傾向が乏しい。)個疹は冒針頭大の小紅斑に始まり,拡大して直径三ミリ前後,さらに癒合して爪甲大の不整形紅斑となり,密に分布してその間に健皮面を網目状に残す。症例によっては小丘疹や紫斑を伴うことがある。この皮疹部には麻疹ウィルスは存在せず,皮疹の発生機序はアレルギー反応となる。(本題からはずれるが,薬疹の一表現型として麻疹型がある。)この時期は高熱が続くため,脱水症状や肺炎・脳炎などの重篤な合併症を有することがある。
 3 回復期
 発疹期を過ぎると急速に解熱し,皮疹は落屑,色素沈着を残して治癒する(風疹では色素沈着は生じにくい)。

 治療
 解熱薬など対症療法。細菌感染合併の時は抗生物質を用い,重症の場合にはγグロブリン製剤を用いる場合もある。
 学校保健法では,解熱後3日経過するまで出席停止となる。

 予防
 麻疹・おたふくかぜ・風疹の三種混合のMMRワクチン。感染時,感染源と時間ができる場合に感染接触後5日以内ならγグロブリンが有効。


手足口病

 症状
 手掌・足底に米粒大程度の紅暈を伴う小水疱が散在する。小水疱は楕円形で,長軸が皮膚紋理の流れに沿っていることが多い。手掌では拇指に多く,足底では土踏まずを避ける傾向あり。および皮疹は膝蓋・肘頭・臀部・手背にも出現する。そう痒はないが若干の圧痛を伴うことがある。頬粘膜や舌,軟口蓋,歯肉にも紅斑・水疱・アフタ様びらんを生じ,疼痛が強く乳幼児では食欲不振に陥ることが多い。小丘疹約半数の症例で,1,2日間の微熱を伴う。数日で乾燥し,軽快する。

 治療
 特に治療を要さない。症状が強いときのみ解熱剤,口腔内のケア,摂水不全の時は補液と,対処療法。発疹期には感染力がほとんどない。

(以下,随時増補します)