皮膚科電子小辞典トップに戻る

17'ダーモスコピー

ダーモスコピー所見

母斑
Clerk母斑
 中央部は比較的瀰漫性の褐色調色素沈着を示し,辺縁部は網目状の色素沈着 (pigment network)を示す。また,辺縁部には顆粒状のglobulesが散在性に見いだされる。中央部で網目状のパターンを認識することができる。

青色母斑
 灰青色の瀰漫性色素であるhomogeneous blue pigmentationの所見が見いだされる。Pigment networkやstreak,dots/globeの所見は見いだされない。
Spitz母斑
 辺縁部に棒状あるいは偽足状のstreaksが多数,ほぼ一様に放射状に分布して認められ,starburst patternの所見を呈する。ただし,部分的にstreaksが欠如し,pigment networkの所見を示すこともある。中央部など,辺縁部以外では黒褐色の瀰漫性色素沈着(structureless areaあるいはblotches)を呈し,特に中央部は多少灰白色調を帯びている。一部ではこの灰白色調色素沈着が網目状を呈する(negative pigmented network)。白色光輝性の顆粒(milla-like cyst)も散見される。
 辺縁部に細い棘状のものが見られる場合もあり,「紫ウニの棘状」とも形容される。

色素性母斑(足底,境界部型)
 平行に走行する皮溝に一致する直線状の色素沈着が認められる(parallel furrow pattern),あるいはそれに直交する線状色素沈着が見られ全体的に格子状のパターンを呈する(lattice-like pattern)。平行線状色素沈着の背景にやや淡い褐色の瀰漫性色素沈着を伴うこともある。
 また,褐色調の密集する細線維状の色素沈着が平行線状の皮丘・皮溝を横切る方向に配列して認められる場合もある(fibrilar pattern)。中央部では各細線維の色調がやや濃いか,その配列パターンは全く同様で,細線維状を呈する。
 皮丘部には顆粒状のdots/globulesも少数認められることもある。
日光黒子
 不整な模様を呈する淡褐色から濃褐色の色素沈着がみられ,虫食い状陥入が認められる。色素沈着内で毛孔部が円形状に色が抜けるために,粗大な網目状を呈する(pseudopigment network)。一部には細繊維状色素沈着が密に平行に走行する(fingerprint-like structure)。
色素性母斑(爪部)
 爪甲全体に淡褐色から濃褐色の帯状色素沈着が認められる。これは多数の褐色縦線状で構成されている。各線状は多少の濃淡は示すものの,ほぼ一様なパターンを呈して平行に走行している(regular lines)。所々にdots/globulesも見いだされる。また,趾先部部皮膚の褐色斑は皮溝に一致するparallel furrow patternの所見を呈する。
色素性母斑(生毛部)
 無構造な色素沈着(structureless areas)がみられる。この色素沈着には黒褐色から灰褐色の濃淡がみられ,特に毛孔周辺で濃く,灰褐色調を呈している。病変部には剛毛も数本見いだされる。毛孔間部などには,比較的小型でほぼ均一な大きさのdots/globulesが多発性に認められる。毛根部や病巣辺縁部には繊細で規則的な網目模様(typical pigment network)が見いだされる。
色素性母斑(Unna型)
 全体として表面平滑で無構造な淡灰褐色調を呈し(homogeneous patten),この瀰漫性の淡い色素沈着内に濃褐色から灰黒色の,やや色調の濃い部分が数ヶ所見いだされ,一部では微細な灰黒色顆粒(peppering)。また,細い毛細血管も見いだされる。


良性腫瘍

脂漏性角化症
多発性のcomedo-like openingsと「畝のような」凹凸(fissures/ridges)が認められる。白色の小顆粒(milla-like cyst)が見いだされることも多い。血痂があれば,多少赤褐色を帯びる。

皮膚線維腫
 中央部には白色調の無構造な部分が認められる(central white patch)。その周辺には淡褐色の網目状の色素沈着がみられる。この網目構造の網紐は繊細で,編み目の形は規則的である(delicate pigment network)。

血管腫
 境界が極めて平滑な黒色から赤黒色ないし暗赤色調の多房状構造物が集ぞく性に認められる(red-blue lacunae/lagoons)。小滴状から顆粒状の赤黒調の色素沈着も認められる。

単純性被角血管腫
 ほぼ均一な黒色調の瀰漫性の色素沈着がみられ,辺縁部の一部では多少赤色調を帯びている(red-blue to red-black homogeneous areas)。全体的に病巣の境界が平滑で,極めて明瞭である。一部淡い白色調を伴う部分がみられる。Pigment networkやstreak,dots/globulesなどの所見は見いだされない。

毛細血管拡張性肉芽腫
 大部分は鮮やかな紅色の無構造な色素沈着としてみられる。有茎部の茎部に相当する部位では紅白色から乳白色を呈してある。また,一部には淡黄白色を呈し,一部には淡紅色の痂皮が付着している。Pigment networkやstreak,dots/globulesなどの所見は見いだされない。

エクリン汗孔腫
 境界明瞭な結節性病変で、辺縁部などに房状構造が見いだされる。全体的に紅色調の病変だが、この紅色調を背景として白色調のやや不整な網目状パターンを認識することができる。紅色の網穴部分には細いヘアピン状、ループ状の毛細血管拡張が認められる。

エクリン汗孔腫(色素性)
 病変の大部分は黒色調の瀰漫性色素沈着(difffue pigmentation)としてみられ,無構造領域(structureless area)の所見を呈する。辺縁部にleaf-like areas様の所見が認められる。一部には赤褐色の血痂が付着しており,病変には紅暈を伴っている。
 ※色素性のエクリン汗孔腫と基底細胞上皮腫はダーモスコピーを用いても鑑別が苦しむことが多い。
悪性腫瘍

基底細胞上皮腫(表在型)
 蛇行状ないし連圏状に不規則に走行する帯状の黒褐色色素沈着あり。この帯状色素沈着は所々で放射状に配列する棘状突起を伴っており(spoke-wheel areas),また不規則に迂回して走行する毛細血管が複数見いだされ,樹枝状の分布が認められる(arborizing vessels)。やや大型で卵円形を呈する灰青色の色素沈着(large blue-gray ovoid areas)と黒褐色調の木の葉状態(leaf-like areas)が多発している。網目状の色素沈着(pigment network)はみられない。

基底細胞上皮腫(無色素性)
 蛇行状に不規則に迂回しながら走行する拡張した毛細血管が複数見いだされる。これらの血管は樹枝状に分枝し,径も不規則で,先細りになっている(arborizing vessels)。黒色や灰青色の色調を呈する所見はみられない。

黒子型悪性黒色腫
 黒褐色から灰褐色の無秩序な濃淡差を示す汚らしい色素斑が瀰漫性にみられ,境界不明瞭である。この斑内に小孔を囲む輪状の色素沈着が多数みられ,粗大な網目状を呈する(pseudopigment network)。この小孔の縁取りの色素沈着の濃さが一様でなく,半弧状を呈するものがある(asymmetric pigmented follicular openings)。青黒色のblue-whitish veilもある。

黒子型悪性黒色腫(末端)
 皮丘に一致する黒褐色ないし濃褐色,淡褐色の帯状色素沈着が認められる(parallel rigde pattern)。エクリン汗腺の開口部が,帯状色素沈着の中央部に規則的に配列する白色点状物として規則的に配列している。灰青黒色調の無構造な瀰漫性色素沈着も認められる。
 ※足底でparallel rigde patternは悪性黒色腫を極めて強く示唆する

悪性黒色腫(表在拡大型)
 辺縁部に線状色素沈着(streaks)あるいは不規則に分布する不整なatypical pigment network,Dots/globulesが見いだされる。多数みられ,部分的に網目状のpigment networkが認められる。中央部などは無構造なstructureless areaの所見を呈しており,その一部はやや灰白色を帯びている。黒色調から灰白色調のblue-white structureが存在し,その一部はpepperingと呼ばれる顆粒状の所見を呈する。また,全体的形状が非対称性で不整であり,外形に切れ込み状陥入を伴う。色素の濃淡差も不規則,非対称である。

悪性黒色腫(結節型)
 表面が乳頭状の凹凸を示す結節で,無構造な黒褐色ないし濃褐色から灰白色の色調を呈する(structureless area)色調に無秩序な濃淡差がみられ褐色調の部分がかなり広い範囲を示す。一部には青黒調のblue whitish veilの所見が認められる。辺縁部などに褐色のdots/globulesもあり。Pigment networkを見いだされることもある。
 ※ ダーモスコピーに於いて足底以外の悪性黒色腫としての診断:3-point checklist法によって判定するスクリーニング法がある。即ち,
 1 色調とダーモスコピー所見の非対称性
 2 atypical networkの存在
 3 blue white structure
の三項目を検討し,存在すれば各一点を与え,合計点が2点以上であれば悪性黒色腫あるいは基底細胞上皮腫と判定する。

無色素性悪性黒色腫(結節型)
 結節性病変は全体的に紅色調を呈しており,一部がやや乳白色調を帯びる(milky-red areas)。この紅色結節の表面は不規則に迂曲するしながら走行する線状の毛細血管(linear-irregular vessels)が数本見いだされる。

悪性黒色腫(爪部)
 爪甲に黒褐色の縦線状の色素沈着の集合で構成されている。各線状の太さ,濃さ,配置がやや不規則である(irregular lines)。各線状を中枢側から末端部に追うと,太さや濃さが途中で変化するものがある。Dots/globulesも数個見いだされる。また,爪上皮から後爪廓に一部に褐色斑(Hutchinson sign)を認める。


その他

Black heel
黒色から赤黒色調の多数の滴状色素沈着が列状に配列して認められる。その存在部位が皮丘部である。この赤黒色顆粒は多少の大小不同を示すが、いずれも境界明瞭、平滑で、玉虫様に見える(pebbles on the ridges)。また、赤黒色調の微細点状色素沈着も認められる(satellites)。

老人性脂腺増殖症
 軽微な陥凹部を取り囲むように,白色から淡黄色の塊状結節が集ぞく性に存在している。この結節部には,なだらかな迂回を示す数条の毛細血管が見いだされる。これらの毛細血管は中央陥凹部を取り囲むように配置している(crown vessels)

(以下,随時増補いたします)