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06紅斑症

<この項で出てくる主な疾患と簡単な診断法>

多形滲出性紅斑:頭痛,発熱,関節痛,倦怠感を先行することが多く,顔面,腕・ひざなどが赤くなる。薬が原因の事もある。

結節性紅斑:感染を先行することが多く,すねに発赤,熱感がある。押すと痛い。

Sweet病:前駆症状として高熱があり,その後紅斑が生じ,それが盛り上がって痛みも生じる。下肢に結節性紅斑を生じることもある。

ベーチェット病:結節性紅斑や,ニキビみたいな症状があり,口の中に治りにくい傷が生じやすい。目,陰部,血管,神経,腸などにも症状が出やすい。

<詳説>

紅斑を来す疾患

 蝶型紅斑:SLE,DLE(円板状エリテマトーデス),皮膚筋炎,伝染性紅斑,紅斑性天疱瘡,薬疹など。

 環状紅斑:蕁麻疹,多形滲出性紅斑,シェーグレン症候群,環状型亜急性皮膚エリテマトーデス,Sweet病,新生児エリテマトーデス,慢性遊走性紅斑,リウマチ性環状紅斑など。

 網目状紅斑:温熱性紅斑,網状血管炎,抗リン脂質抗体症候群,皮膚結節性多発動脈炎,結節性多発動脈炎。

 下腿の紅斑:結節性紅斑,バザン硬結性紅斑,ウェーバー・クリスチャン症候群。

多形滲出性紅斑

 頭痛,発熱,関節痛,倦怠感を先行することが多く,顔面,膝蓋,四肢伸側に浮腫性紅斑が生じます。

 原因は多様で,感染によるアレルギーの他,薬疹の一表現型となることがあります。膠原病や内蔵悪性腫瘍などの基礎疾患を見のがさないことが大切です。検査として血沈,CRP,ASO,単純疱疹やマイコプラズマに対する抗体価,その他抗核抗体,RA,抗ss-A,ss-B抗体など膠原病関係の抗体をチェックしておく必要があります。

 原因がわかれば除去,基礎疾患の治療が必要です。

 対照的に抗アレルギー薬,NSAID,ステロイドの外用を用います。重症例にはプレドニン20〜30mg,ヨードカリ900mg分3も用います。

Stevens-Johnson症候群

 薬疹の項を参照してほしいのですが,多形滲出性紅斑の重症型として全身の皮膚に紅斑,粘膜部のびらんが生じる場合がありStevens-Johnson症候群といわれますので要注意です。ステロイド内服が必要です。

結節性紅斑

 下腿伸側などに発赤,熱感,圧痛や自発痛を伴います。組織学的には皮下脂肪織に好中球の浸潤を認められます。

 検査としては,ESR,CRP,ASO(溶連菌の関与があるため),針反応・ツベルクリン反応・胸部レントゲン・心電図・眼科受診(後述のベーチェット病やサルコイドーシスの診断),そして脂肪織レベルまでの皮膚生検が重要です。

 安静を保ち,NSAID,ヨードカリ900mg分3内服で治療します。プレドニン30mg程度の内服も重要です。

 なお,ベーチェット病(後述),サルコイドーシス,薬疹,潰瘍性大腸炎,クローン病で生じることが知られています。

 バザン硬結性紅斑などでは,類似の皮疹となりますので注意が必要です。

Sweet病

 前駆症状として高熱があり,その後滲出性紅斑→有痛性隆起性紅斑が生じます。下肢に結節性紅斑を生じることがあります。

 細菌に対するアレルギーですが,白血病・MDS,悪性腫瘍の合併が多く,要注意です。

 検査所見としては,白血球増加,好中球増加,ESR亢進,CRP陽性となります。ただし血液疾患がある場合は貧血・白血球減少・血小板減少が認められます。ベーチェット病のrule outも必要です。

 治療としては,NSAIDの他,DDS,コルヒチン,ヨードカリ900mg分3が有効とされています。重症ならプレドニン30mg内服も必要となります。

 発熱,全身倦怠感が強い場合やステロイドの内服が必要な場合は入院の適応となります。

 なおMDSに併発するSweet病はやや非定型的なものが多く,neutrophilic dermatitis of myeloproliferative disordersといわれることがあります。

 

ベーチェット病

 皮膚の他,口腔粘膜(アフタ),外陰部,眼に症状があらわれます。遺伝的要因(HLA-B51)に細菌感染などの外的環境因子が加わって生じます。好中球の機能亢進が深く病態に関与しています。

 皮膚症状としては,結節性紅斑,血栓性静脈炎,毛包炎・ざ瘡様発疹があります。

 なお,血管ベーチェット,神経ベーチェット,腸管ベーチェットというのもあり,注意が必要です。

 検査として,針反応,ESR・CRP・白血球数(活動性の評価),プロトロンビン時間・フィブリノーゲン量・TAT・PIP(血管病変のスクリーニング)を行います。

 治療ですが,コルヒチン1〜1.5mgで好中球の機能を抑制します。プレドニン20〜30mg内服もありますが,眼症状には禁忌です。対症療法としてNSAIDも使います。

 進行性・難治性ならネオーラルも用います(保険適応あり)。

成人スチル病

 スチル病の成人型といわれますが,原因不明です。サーモンピンクの紅斑,丘疹,蕁麻疹が発熱と平行して出没します(リウマトイド疹)。発熱,関節痛,皮疹がtriadとされています。

 DICを合併しやすいとされ,要注意です。

 検査として,血沈亢進,CRP強陽性,貧血,白血球・好中球増多症,核の左方移動,自己抗体陰性,RA因子陰性,IgG軽度増加,補体値上昇,血清フェリチン増加,肝機能異常,低アルブミン症,高ガンマグロブリン症が認められます。

 治療にはステロイド剤,免疫抑制剤,NSAIDを用います。

ライター病

 多発性関節炎・結膜炎・尿道炎の他,皮膚症状として手掌足蹠・指趾の角化,膿疱,小水疱,爪囲発赤腫脹があります。近年,ライター病,強直性関節炎,乾癬性脊椎炎が類縁疾患とされ,seronegative spondarthritidesという疾患概念が提唱され,上記の疾患などを構成するとされています。

 HLA-B27と感染が関与しているといわれています。

 抗生物質,NSAID,免疫抑制剤で治療します。