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05痒疹・皮膚そう痒症

<この項で出てくる主な疾患と簡単な診断法>

慢性痒疹:全身が著しく痒いて慢性に経過するが,アトピー性皮膚炎とは異なり皮膚は盛り上がっているのが主体となっている。糖尿病・肝臓病などに合併しやすい。

皮脂欠乏性湿疹:痒みはあるが,皮膚の変化は乾燥以外目立たないことが多い。高齢者にみられる。

<詳説>

痒疹

 丘疹を主体とし,激痒を伴い,慢性に経過します。急性痒疹,慢性痒疹,思春期女子に多い色素性痒疹,妊娠3〜4ヶ月頃に多い妊娠性痒疹があります。紅斑性蕁麻疹局面を生じるPUPPPもあります。

急性痒疹

 小児に多く,小児ストロフルスと呼ばれます。食餌に対する過敏症または虫刺による異常経過が病因となります。

 治療はステロイド軟膏外用・抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤内服のほか,必要なら食事療法,虫刺に注意,です。

慢性痒疹

 臨床症状から多形慢性痒疹,結節性痒疹などに分類されます。肝疾患,糖尿病,内蔵癌などが病因となることが多く精査が必要ですが,基礎疾患のない場合も少なくありません。リンパ腫のルールアウトも必要です。

 治療は基礎疾患があればその治療が必要で,その他Very StrongあるいはStrongestクラスのステロイド外用(テープ製剤・ODTも用いる),抗アレルギー剤・抗ヒスタミン剤の多剤併用となります。結節の冷凍凝固もよく行われますが,結節が取れてもその痕がかゆくなることもありますので要注意です。保険適応外ですがミノマイシン内服,ビタミンD3(ドボネックス)外用,ネオーラル内服,紫外線療法が効果ありという報告もあります。ステロイドの内服もありますが,量を減らすとすぐ再燃し好ましい治療方法とはいえません。

 

皮膚そう痒症・乾皮症

 皮膚にそう痒感のみあり,皮膚の変化は目立たない状態を皮膚そう痒症といい,汎発性・限局性・老人性の三つに分類されます。肝臓病・糖尿病・悪性リンパ腫などの基礎疾患の他,透析患者の過半数では生じやすいとされ,また老人性乾皮症(皮脂欠乏性湿疹)によるものがあります。ステロイド外用,抗アレルギー剤・抗ヒスタミン剤を用います。

 老人性では保湿が重要となり,尿素軟膏などの保湿剤も併用します。痒いときは掻爬せず,アイスノンによる冷却,手袋による掻爬の防止などの生活指導も重要になります(長期間にわたり掻爬すると湿疹化するため。なお,ステロイドはMildクラスを主体としてよいことが意外とあり,貨幣状湿疹やべん胝(たこ)様湿疹を生じている部位にのみVery Strongクラス以上のステロイドを用いる必要がでてきます)。くん裂(ひびわれ)には亜鉛華軟膏の併用も必要となります。

 高齢者で紅皮症となったら,生活指導などのため入院による加療がよいでしょう。