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02薬疹・中毒疹

<この項で出てくる主な疾患と簡単な診断法>

※注意! 前からのんでいて大丈夫だった薬でも,ある日突然薬疹(薬のアレルギー)がでることはよくあり,おかしいと思ったらすぐに病院に行くこと!

固定薬疹:風邪薬などで,皮膚が円形に赤くなる。

Stevens-Johnson症候群:尿酸の薬などが原因で皮膚の大半が赤くなる。目や口の中の粘膜もおかしくなる。→死亡率が高く,すぐ病院に行くこと!!

TEN型薬疹:薬やばい菌のため広範囲に皮膚が赤くなったり,むけたりする。むけてないところでも指でこするとむけやすい。→死亡率が高く,すぐ病院に行くこと!!

<詳説>

薬疹

 薬剤(漢方薬・健康食品を含む)により皮膚あるいは他の臓器に症状が起こることです。アレルギー反応がほとんどです。ただし,非アレルギー性もあります。

以下にいろいろ書きますが,尿酸の薬であるザイロリックR(アロプリノール),市販の風邪薬や病院で出されるPL顆粒Rに含まれるアセトアミノフェンは薬疹が多いことは重要です。

薬疹の発疹型と主な原因薬剤

 固定薬疹(円形の紅斑):アンチピリン,バルビツール,テトラサイクリン,サルファ剤,サリチル酸

 播種状紅斑丘疹型:ペニシリン,アンピシリン,ストレプトマイシン,バルビツール,クロルチアジド,サルファ剤,テトラサイクリン

 湿疹型:ペニシリン,アンピシリン,ストレプトマイシン,バルビツール,クロルチアジド,プロメサジン

 多形滲出性紅斑型:クロルプロパミド,ペニシリン,フェノチアジン系,非ステロイド消炎鎮痛薬,抗尿酸合成薬

 紅皮症型:ペニシリン,フェノチアジン系,サルファ剤,金製剤,ヒダントイン

 粘膜眼皮膚症候群(Stevens-Johnson症候群。多形滲出性紅斑型の重症型で致死性が高い):ペニシリン,フェノチアジン系,サルファ剤,金製剤,ヒダントイン

 中毒性表皮壊死融解症(toxic epidermal necrolysis,TEN,ライエル型。黄色ブドウ球菌でも起こる。ニコルスキー現象がみられる,つまり指でこすると新たにびらんが生じる):ペニシリン,フェノチアジン系,サルファ剤,金製剤,ヒダントイン

 蕁麻疹型:ペニシリン,セファレキシン,テトラサイクリン,サルファ剤,アセチルサリチル酸

 苔癬型:チアジド,金製剤,キニジン,ピリチオキシン

 紫斑型:金製剤,サルファ剤,ペニシリン,アセチルサリチル酸

 色素沈着:クロルブロマジン,砒素,フルオウラシル,銀

 結節性紅斑型:経口避妊薬,ヨード,サルファ剤,サリチル酸塩

 薔薇色粃糠疹型:バルビツール,金製剤

 紅斑性狼瘡型:ヒドララジン,フェニトイン,D-ペニシラミン,INH

 天疱瘡型:D-ペニシラミン

 ざ瘡型:副腎皮質ホルモン,ヨード,ブロム,アンドロゲン,INH

 その他(脱毛・多毛・結節・角化)

薬剤誘発性皮膚疾患

 エリテマトーデス:ヒダントイン,トリメタジオン,ブリミドン,エトクスシミド,カルパマゼピン,ブロカインアミド,キニジン,ヒドララジン,イソニアジド

 天疱瘡:D-ペニシラミン,カプトブリル,チオブロニン,ペニシリン,リファンピシン

 類天疱瘡:D-ペニシラミン,フロセミド

 ポルフィン症:アルコール,エストロゲン,グルセオフルビン

 ペラグラ:イソニアジド

薬疹の発症機序

 アレルギー反応・非アレルギー反応・光毒性反応などがあります。

 アレルギー反応

  I型:アナフィラキシー反応

  II型:細胞融解あるいは細胞毒型

  III型:アルサス型(血管炎)

  IV型:遅延型過敏

  光アレルギー反応

 非アレルギー反応

  薬理学的作用によるもの

  生態側の条件によるもの:特異体質(代謝酵素活性の低下),非耐性

 光毒性反応(薬剤+光線で皮膚症状が生じる)

中毒性表皮壊死剥離症(TEN型薬疹)

 薬剤が原因の場合,多形滲出性紅斑様皮疹が先行し,表皮下の剥離・表皮の変性を起こします。粘膜疹・色素沈着があります。発熱が持続性で,成人に起こりやすいとされます。経過は2〜3週に渡ります。治療は全身管理が必要で,異論はありますが副腎皮質ステロイドを用います。

 ブドウ球菌が原因となることもありますが,びまん性の紅斑が主として顔面より始まる・粘膜疹や色素沈着はない・発熱は一過性・表皮内の顆粒層の剥離・乳幼児に多い・夏から秋に多い・経過は2〜4日と短い・抗生物質で治療と,薬剤が原因となる場合と異なります。